彼女達の船は、確かに失われた。 シェルターに逃れながらも、彼女達は同時に死も覚悟していたのだ。 救難ポッドの形になってはいても、宇宙に放り出された彼女たちを―― 拾えるような船が、近くに残らない事は……彼女たちにも分かっていたから。 だから3人は寄り添いあって眠りに付いた。目を覚まさない事を、密やかに願って。
――けれど、目覚めの時はきた。 3人は見知らぬコロニーの、カプセルの中にいた。 腐食した四肢から、その頭と胴を生かす為、切り落とされた姿。 痩せこけた身体のあちこちに管を通され、管に生かされている姿。 余りに酷い2人は二度と、その小さな空間から出られないのだろうと残り1人は理解した。
その残り1人に、白衣の人間が声をかける。
「代価は既に貰っているから、ゆっくり夢でも見たらどうかい」
スキエッタのプレイヤー、イノセシア=フロレス(Inocecia=Flórez)はその1人無事であった者である。 夢と知ってしまったヴォートを憂い、またもう1人が目覚めぬ事を祈っている。 ただ実は肉体的なダメージが軽微だっただけで、精神的なダメージは深く。彼女の可笑しな言動は其処に由来する。 そして、また……彼女もそれをヴォートから心配されている事を、彼女は知らない。
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